資金プランを立ててみましょう

資金プランを立てる目的は、おおまかな予算を把握すること

資金プランを立てることは、そんなにむずかしいことではありません。まず、事業のための費用をどうやって用意するかを考えてみましょう。そのためには自分の「資金力」を把握する必要があります。

次に、事業を始めるための費用(開業資金)と事業を続けるための費用(運転資金)について、おおまかな予算を組んでみましょう。まだプランの段階なので、「〇〇にはこれくらいの費用がかかるかも」と思いつくまま列挙するだけでかまいません。おおよその費用がわかると、商品・サービスの値段を決める際にも活かせます。実際に資金プランをたてることで、想定外の費用必要で、計画段階より3割増しになると気づく方が多いです。

まずは、現在の資金力を洗い出してみましょう

事業資金は金融機関から借り入れる方法もありますが、必要金額に対する一定の割合で自己資金を用意できることが融資条件となるケースがほとんどです。初めての起業なら、可能なかぎり、自己資金で賄いたいものです。まずは現在の資金力はどれくらいか把握しましょう。

私の資金力を確認するワーク

私の資金力
資産内訳金額
預貯金
各種積立金
株価・有価証券
保険・共済金
退職金
その他
資産合計① 万円
負債金額
各種ローン  
その他
負債合計① 万円
生活費等金額
生活費(半年以上)    
緊急時の費用
生活費等合計 万円
資金調達金額
借入れ      
補助金・助成金など
資金調達合計 万円
起業に使える資金

①-②-③+④=   万円

おおまかな事業予算の立て方

次に、事業に必要な費用について、おおまかな金額と簡単な内訳を書き出します。まだ、プランの段階ですので、「〇〇費」といった正確な仕訳は不要です。見当がつかないものは、先輩起業家に話を聞いたり、インターネットなどで相場を調べ、「こういう費用がかかるかも…」と思いつくまま列挙してみましょう。

事業予算の例

予算項目(例)金 額  内訳(※事業で使う割合)
通信費54,000円携帯代6,000円/月×50%(※)×12か月
プロバイダー代3,000円/月×50%×12か月
研修費80,000円セミナー受講費用 20,000円×4回/月
資料・教材費270,000円書籍自分の勉強用 70,000円/年
教材費 200,000円
備品代200,000円パソコン代 100,000円 机・椅子 50,000円
コピー用紙・文具50,000円
水道光熱費24,000円電気代10,000円/月×12か月×15%
水道代 10,000円/2か月×6回×10%
旅費交通費30,000円2,500円/月×12か月
確定申告費30,000円
税金(租税公課)7,900円自動車税 39,500円/年×20%(※)=7,900円
広告宣伝費180,000円ウェブ制作160,000円 名刺20,000円 
合計875,900円

私の事業予算を立てるワーク

事業予算の例を元に、あなたの事業予算を立ててみましょう。

予算項目金 額  内訳(※事業で使う割合)
通信費
研修費
資料・教材費
備品代
水道光熱費
旅費交通費
確定申告費
税金(租税公課)
広告宣伝費
その他
合計

開業前後に必要な2つの費用

①開業資金(初期費用)

事業開始~営業開始=事業を始めるための費用

開業資金

パソコンなどの設備機器や備品の購入費用、広告・宣伝費用、さらに商品などの仕入れ費用などがあります。事務所や店舗を借りる場合は、その準備費用も必要です。自分ひとりで生計を立てている人は、収入を得るまでの生活費などが必要ですし、借入金などがあれば、その返済分も見込んでおかなくてはなりません。事業に資金を投入しすぎて生活や返済ができなくならないように注意しましょう。

②運転資金(ランニングコスト)

営業開始~3、6か月=事業を始めてから3か月から6か月くらいの費用

運転資金(ランニングコスト)

自分の収入を含めた人件費、事務所や店舗の維持・修繕費、商品仕入れ、交通費や通信費などの経費があります。事業を続けるためには、お金が出ていきますが、起業してすぐに事業が軌道に乗る(出ていくお金を上回るだけのお金が入ってくる)わけではありません。収入を得られるまでの期間が長いほど、運転資金を多く用意しておく必要があります。事業の内容によっても違いますが、少なくとも3か月以上は見込んでおいたほうがよいでしょう。

とくに、運転資金のうち、売り上げの状況にかかわらず、一定額を定期的に支払わなければならない費用を「固定費」といいます。これが支出全体に占める割合が高いほど経営が苦しくなるので、できるだけ押さえたいところです。

事業に必要な費用を書き出してみましょう(資金プラン)

起業する前に、事業を始めるための費用(開業資金)と、事業を続けるための費用(運転資金)がどのくらいの費用がかかるかを把握しておくことが大切です。思いつくまま書き出してみましょう。

開業資金を確認するワーク

私の開業資金
分類 内容 予測金額  修正金額  
店舗・事務所          
設備・什器等
通信費
広告宣伝費
仕入れ
教材費
確定申告費
税金(租税公課)
その他
合  計

運転資金を確認するワーク

私の運転資金
分類 内訳 1か月目 2か月目 3か月目 
家賃・リース料          
通信費
水道光熱費
仕入れ代
材料代
旅費・交通費
消耗品費
事務用品費
広告宣伝費
合  計   円

起業を支援する公的制度を知っていますか?

補助金・助成金で広がる可能性

「起業するなら、補助金や助成金がもらえるらしいよ!」そんな話を聞いたことはありませんか。実はこれ、3割ぐらい正しくて、7割ぐらい間違っています。

そもそも、補助金とは「チャレンジする事業に対してもらえるお金」であり、助成金とは「人をきちんと雇ったり教育したりするときにもらえるお金」です。他にもいろいろな分類の仕方がありますが、ここでは便宜上そのように表現することにします。いずれも、事業の可能性を広げるのに役立つ資金であり、返済は不要です。

申請してみる価値はあり

補助金や助成金があれば、事業の可能性も拡がりそうですが、いつでも募集されているものではありません。国や県などが、毎年「この分野を伸ばしたい!」という目標のもとに予算を組んで設けられるものなので、「今年は中小企業のIT化を促進するぞ!」という目標があれば、「IT化に対しての補助金」が用意されますし、「景気が悪くて失業者がたくさん出そうだ」という状況になれば、失業者であふれないように、「助成金制度を設けます!」となり、これまで失業保険を払っていた人が起業しやすいような政策を行います。

また、応募すれば誰でももらえるわけではありません。補助金の場合、事業プランなどを書いた申請書を提出し、審査された結果、採択されてはじめて補助金支給となります。当然ながら落選する方もいます。

一方、助成金の場合は、要件を満たしていればもらえることが多いのですが、「自分が代表者として従業員の社会保険料をきちんと負担していること」が前提です。

このように補助金・助成金はその内容が毎年大きく変わりますので、活用したい場合は、補助金は商工会議所や税理士、中小企業診断士、助成金はハローワークや社会保険労務士に条件に見合うものがないかを確認することをお勧めします。

補助金は「先にもらえる」わけではなく、「使った後に返ってくる」ものがほとんどです。また「補助金を使ってきちんと成果が出たか」といった「報告義務」も数年にわたって課されます。

面倒に感じるかもしれませんが、現金を先に渡したら生活費に使ってしまう人もいますし、渡しっぱなしで効果が不明では、税金を正しく使えているかもわかりません。いろいろな条件やタイミングがありますが、それでもやってみよう!という場合はチャレンジしてみる価値はあります。

金融機関などから融資を受けるには?

お金を借りる「融資」という方法もある

銀行などの金融機関からお金を借りて事業を始める方もいらっしゃいます。金融機関からお金を融通してもらうことを「融資」と言います。融資の制度にはさまざまなものがあり、女性やシニア、若年層の起業家を対象としたものもあれば、新規開業あるいは、再挑戦に限定したもの、IT導入や地域活性化に特化したものなど、対象や目的ごとに細かく分かれています。

出資」と「融資」の違い

資金を調達する手段としては、「出資」という方法もありますが、最大の違いは「返さなければいけないお金かどうか」という点です。出資は、その会社の将来的な成長や、上場した場合の株価の値上がりや配当を期待するため「返さなくてもよいお金」です。返さなくてもよい分、出資を受けるための条件は厳しくなります。

一方、融資は「返さなければならない借金」ですので、高額な資金を融資してもらう場合には「担保」を求められることもあります。担保というのは、お金を借りた人がお金を返せないときに備えて、お金を貸す人がかける保険のようなもので、大きく分けて「人的担保」と「物的担保」があります。

人的担保とは、お金を借りた人以外の人で保証人による担保のことです。物的担保とは、不動産などの特定の財産による担保です。株や有価証券などを担保としてお金を借りることもでき、返済できなくなった場合にお金の代わりとして回収されます。

なお、お金を借りた際に必要となる金利は資金の使いみち、融資期間、自己資金の金額、担保のあるなしなどの諸条件によって変わります。

金融機関はここを見ている

金融機関はお金を貸して、それに利子をつけて成り立っています。なので、貸すかどうかを決めるにあたっては、当然ですが「返せるかどうか」を事前に調査します。ではどのような点を審査するのでしょうか。

「売上と経費の計画が妥当でお金が本当に返せるかどうか」もしも事業がうまくいかず、返せなかったときに補てんできるだけの資産(担保)があるかなどの「数字で表せる項目」に加え、実はその人の「人間性」も見ています。

人間性が高ければ、担保がなくても一般的に利率は高くなりますが、お金を貸してもらえる可能性も高まります。ここでいう「人間性」には「責任感がありそうか」「経歴が備わっているか」といった、男女を問わず見られる項目のほか、女性ならではのポイントもあります。金融機関が女性の借入希望者のどこをみているのか、参考までに元融資担当者の声を紹介しておきます。

プライベートとの両立が可能だろうか?

長年、金融機関で多くの女性経営者を見てきましたが、プライベートとの両立ができずに廃業するケースがたくさんありました。何か突発的なことが起こって急に店をたたむのではなく、親が弱ってきたから定休日を週1日から2日、2日から不定期に…といったことを繰り返しているうちにお客様が離れてそのままずるずる閉店といったケースです。自己都合に顧客は合わせてくれません。

ですから私は、女性からの借入れの相談があった場合、家族構成や協力してくれる人がいるかどうかを必ず聞いていました。「何かあったときに協力してくれる人をつくること」も経営者として必要な能力だと考えています。(元・信用金庫 支店長)

ライバルが出現しても大丈夫だろうか?

女性の起業に限ったことではないのですが、「ライバル」が登場したときに太刀打ちできる「何か」があるかどうかも重要なポイントです。流行分野での起業の場合は、その流行が去った時にどうするのか、また資金力のある大手が商圏内に同じビジネスで参入したらどうするのか、といった問いかけに明確に答えられない場合、融資はむずかしくなります。

夢と希望をもって企業をしても、ライバル登場といった事態が起こったとき、何も想定していなかったら一気に心が折れるケースも多々あるからです。お金を借りるのであれば、リスクを含め、現実を見据えた計画を立てましょう。(元・銀行 支店長)

金融機関からお金を借りるのは事業計画や面談が必要で一見、面倒に思えますが、必要な手続きを通じ、事業プランがきちんと整っていくというメリットがあります。金融機関のハードルが高いからと言って、間違っても安易にお金を貸してくれるところから借りたりしないように注意してください。

起業を対象とした融資制度

信用保証協会の創業を支援する制度

信用保証協会は、中小企業・小規模事業者が金融機関から「事業資金」を調達する際に、保証人となって融資を受けやすくなるようサポートする公的機関。全国各地に拠点をもち、地域に密着した支援を行っている。

対象者

中小企業・小規模事業者

利用条件

制度を利用するには、次の3つの基準を満たし、かつ審査に通ることが必要。また、融資を受けた場合「信用保証料」が必要となる

①規模(資本金・従業員数)業種別に定められた資本金と従業員数の条件を満たしていること

②業種 農林漁業や金融業などの一部の業種を除き、ほとんどの商工業の業種が対象。ただし、許認可・届出等が必要な事業の場合は、その許認可等を受けていること

③区域・業歴 各信用保証協会の管轄区域(都道府県・市)で事業を営んでいること。保証制度によって、要件として業歴が定められている場合もある。

保証制度

例:創業関連保証 (一般社団法人 全国信用保証協会連合会

対象者:これから創業する人または創業5年未満の人

対象資金:創業資金=創業または創業により行う事業の実施のために必要な設備や運転資金

条件:事業計画(ビジネスプラン)が明確であること

保証限度額:1000万円(無担保)

日本政策金融公庫の「新規開業資金」

日本政策金融公庫は、政府100%出資の政策金融機関。個人企業や小規模企業向け融資ほか、全国152の支店網を活かした商談会や経営支援、創業セミナー、メール相談なども行っている。

対象者

新たに事業をはじめる人や事業開始後おおむね7年以内の起業家

融資内容

融資限度額7200万円(うち運転資金4800万円)

返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が7年以内

※使い道、返済期間、担保の有無などによって異なる利率が適用される。日本政策金融公庫のホームページに詳しく載っていますので興味のある方はご確認ください。

お金や数字を目にすると拒絶反応を示される女性もいらっしゃいますが、ビジネスとお金と数字は三位一体なので、少しずつ慣れていきましょうね。ビジネスは孤独です。良くも悪くも数字は良きパートナーとなり、あなたの方向を指し示してくれたり、成果を見せてくれる一番身近な存在です。慣れてくると楽しくなるので、ワークにしっかり向き合ってみてください。

さあ、この講座も折り返し地点です。少しひと休みしたら、STEP10の【スケジュール】へ進んでくださいね!

YUKI

Step10スケジュール