お金の管理は「コスト意識」から始まります

公私の「お金」はきっちり区別しましょう

起業して必ずしなければならないのが、「お金の管理」です。プライベートのお金と業務用のお金はきっちり分けます。通帳は、事業用とプライベート用と別々に持つことをおすすめします。そして、事業用のお金の出し入れは、できるだけ通帳上で管理しましょう。こまめに記帳し、「研修費」「月謝〇名分」など必要に応じてメモを残しておけば、お金の流れを把握しやすく、あとで帳簿を作る際にも役立ちます。

相手が顔見知りであっても、できるだけ現金でやり取りせず、口座振込かカード払いで記録を残し、現金払いの場合も必ず「領収書」をもらうようにしてください。交通費や配送料、お金の釣銭など、日常の小さな支払い用現金(小口現金)を手元に置いておきたい場合は、専用ケースや金庫などを用意して管理し、出し入れの都度「現金出納帳」に記帳します。

一日の終わり、手元の現金と出納帳の残高は、常に一致することになります。なお、レシートや領収書をため込むと、あとで整理するのが大変ですので、日常業務の中でのルーティンにしましょう。仕分けを楽にするためにあらかじめ勘定科目ごとの区別のファイルをつくってわけるのもおすすめです。判断に迷うものは、いったん「その他」とし、ネットで「〇〇 勘定科目」と検索するのがよいでしょう。

知らないと損する「節税」の知識

事業を行うためにかかった費用は、「必要経費」にすることで節税ができます。しかし、同じ品物を買った場合でも、経費として認められる場合と認められない場合があります。では、「何がどこまで」経費になるのでしょうか。

例えば、カフェで飲んだコーヒー代は、「打ち合わせのための喫茶代」であれば、経費として認められます。けれど、「家族や友人との利用」であれば、個人的な支出なので経費にすることはできません。

洋服を購入する場合、仕事用のスーツであったとしても、プライベートでも着用できるような場合は経費にはできません。しかし、お店のロゴマークが刺繍されたウエアやキャップ、ヨガの先生のレオタードなどは、通常、仕事以外には使用しないと考えられるので、経費として認められます。

支払った税金も、所得税、住民税などは、事業に関係なく支払う義務のあるものなので経費とならず、事業用の自動車の自動車税などは経費となります。また、お店の家賃や商品の仕入れ代、アルバイトさんの人件費などが経費になることは知っている人が多いと思いますが、実は「事業専用でないもの」も、事業に使うのであれば、その使用割合(使用時間や頻度)に応じて経費にできるものもあります。

生活にかかった費用と事業にかかった費用で分けることを「家事按分」と言い、たとえば、自宅兼事務所の電気料金や通信費、水道光熱費、家賃などは「事業用に使用した割合分」は経費になります。

きっちりと「これは仕事用」と区分できなくても、たとえば、水道料金の場合、請求額にだいたいの割合をかけて計算すれば大丈夫です。この経費になるものならないものについては、一覧表にしましたので、帳簿整理(仕訳)などの際の参考になさってください。

経費なるもの・ならないもの一覧表(例)

勘定科目経費になるもの経費にならないもの
租税公課固定資産税・自動車税・不動産所得税所得税・住民税など
荷造り運賃販売商品の荷造りに要した包装材料費、宅配料金など
水道光熱費水道代・ガス代・電気代など家事用の水道代・ガス代・電気代など
旅費交通費電車賃・タクシー代・有料駐車場代・仕事のための宿泊代など家族旅行など
通信費事業のために支出した電話代・切手代・プロバイダー代など
広告宣伝費チラシ作成代・ホームページ作成費用・粗品代・求人広告費
仕入高販売のために購入する材料や商品・売上高の原価の仕入分が該当するもの家族で消費するもの
消耗品事業で使う備品の中でも比較的金額が安く、短期間で使い切れるものコピー用紙、文房具、ラッピング代、印刷代など
給料賃金従業員に対して支払った給料、賞与、手当など個人事業主の自分への給料
損害保険料商品や店舗等を対象とする損害保険料、事業用の自動車保険料事業主自身の保険料のうち、事業で使用していない部分(生命保険は経費にはなりませんが、税金控除の対象になります)
福利厚生費従業員が対象とする損害保険料、健康診断費用、研修参加費事業主自身の健康診断費用・医療費・残業飲食代・研修費用・国民年金・国民健康保険の保険料
接待交際費手土産代、打ち合わせの喫茶、飲食代、得意先への慶弔費・歳暮代町内会費・親族・友人との飲食代
減価償却費建物、車両、機械などの事業用資産(取得価額10万円以上のもの)

経理用ソフトを使えば、仕訳も簡単

初めての起業なら、「経理はどうすればいい?」「帳簿はどうやってつくる?」という人は多いでしょう。でも、難しく考える必要はありません。いまは、使い勝手の良い会計ソフトもあるので、上手に活用すれば手間を軽減できます。

私も使用しているおすすめのクラウド会計ソフト
【クラウド会計シェアNo.1 freee】https://www.freee.co.jp/
・無料でも使えます。
・個人事業主版と法人版から選べます。

帳簿には、大まかに分けると、「入ってきたお金=収益」と「出て行ったお金=費用」を記載します。その際、取引の内容に応じて、「通信費」「修繕費」といった「勘定科目」に分類することを「仕訳」と言います。

例えば、ある経理ソフトでは、文房具を現金で購入した場合、「〇月〇日→経理を支払った→文房具→現金で支払った→500円」と入力すれば、自動的に帳簿上の現金残高から500円が引かれ、「消耗品500円」が追加されます。あるいは「〇月〇日→売上ができた→現金でもらった→10,000円」と入力すると、帳簿上の現金残高と売上に10,000円が上乗せされるという具合です。

勘定科目に分類するのは、「何に使ったお金なのか」「どこから入ってきたお金なのか」ということを、いつ誰が見てもわかるようにすることが目的で、法律で「〇〇には〇〇という科目を使う」といった明確な決まりがあるわけではありません。

ただ、仕訳には一貫性が必要なので、一般的な分類にならうほうが合理的です。私も、判断に迷ったときは、その都度ネットで調べたり、税務署や商工会議所の記帳相談などを活用し、少しずつ知識を増やしてきました。

会社(法人)など事業の規模や内容によっては、財務諸表(「賃貸対照表」「損益計算書」など)をつくる際に仕訳の知識が欠かせませんが、個人事業の範囲なら、細かいことは覚えなくても、「何を表すのか」がわかっていれば十分です。

なお、「費用」に関しては「経費になるもの・ならないもの」がありません。また、交通費や仕入代のように発生するつど記帳するものと、減価償却費や生命保険料など1年に一度まとめて処理するものがありますので、しっかり押さえておきましょう。

減価償却とは?

複数年にわたって経費として計上する制度

「何年も使うものなら、お金を出したときに一度に費用にするのではなく、何年かに分けて経費にしてくださいね。」というものを「減価償却費」と言います。

この減価償却費は、パソコンや車など長期間にわたって使用し、経年劣化により価値が下がっていく(減少していく)資産を取得した際に、その取得費用を試算事に決められた耐用年数の機関に振り分けて、各年度の費用として計算する会計処理のことです。耐用年数は購入したもの(購入条件)によって異なります。

例えば、車を160万円で買ったとします。その場合、購入した年だけではなく、その後数年間分割して(普通車は6年間、軽自動車は4年間)経費として処理できます。

また、家族も車を使うため「仕事に使う割合がだいたい20%程度」であれば、減価償却費のうち20%は経費として認められます。

事業で使う新車を160万円で買った場合の1年目の経費計算の仕方

購入価格耐用年数事業の使用月数 / 年事業に使った割合その年に経費にできる金額
160万円1/6(0.167)12 /12(1)20%5万3400円

このように「かかった費用を複数年にわたって経費として計上」できれば、その期間の利益額が抑えられ、その分税額も抑えられるというわけです。

この減価償却について知っておくことは、個人で事業を営んでいる人には、さまざまなメリットがあります。仮に、減価償却しない場合と比べてみましょう。

「車は6年間使用」、「売上は一定(160万円)」とした場合、購入したその年にしか経費にできなかったら、税金は①のように計算されることになります。ただし、車以外の経費はかからないものとします。そこで、減価償却をすると、②のように課税所得の金額が変わってきます。

1年目:売上160万円-経費(車購入代)160万円=所得0(←税金かからない)

2年目:売上160万円-経費0万円=所得0(←税金いっぱい!)

1年目:売上160万円-経費(車減価償却費)26万円=所得134万円(←税金かかる)

2年目:売上160万円-経費(車減価償却費)26万円=所得134万円(←税金かかる)

なお、何年間にわたって経費にするのかはモノによって異なり、品目ごとに法律で定められた「法定耐用年数」のルールに従うことになります。

減価償却費はその年にお金を支払っていなくても、経費として処理できる制度です。金額も大きくなることが多いので正しく処理しましょう。

この内容を踏まえて、STEP9の【資金プラン】へ進んでくださいね!

YUKI