事業を始めるには「届け出」が必要です

女性の70%ほどは個人事業主としての開業

「起業したい」と思ったときに、ネックになることの1つが「役所などへの届け出手続き」ではないでしょうか。学校でも会社でも習わないので、わからないですよね。詳しく説明するとおそろしく時間がかかるので、この記事ではさらっと概要だけ説明します。

事業をはじめる場合、まず「会社を作れなければ…」と思う人も多いかもしれませんが、「個人事業主になる」という選択もあります。個人事業主とは、「株式会社等の法人を設立せずに事業を行っている人のこと」です。

個人事業主の手続きはとても簡単です。事業を開始した日から一か月いないに所轄の「税務署」へ「開業届出書」を一枚提出するだけです。女性の場合、約70%程度が個人事業主としての開業と言われており、とても一般的な開業方法です。

開業・設立には、2つの形態があります

個人事業主としての開業を考えているけど、法人化についても知っておきたいという方もいらっしゃると思います。そこで、個人事業主の場合と法人設立の場合の手続きやそれぞれの比較を一覧にしましたので、参考にしてくださいね。

個人事業主の場合

  • 個人の情報はもともと戸籍・住民登録などで把握されているため、開業届を出すだけでよい
  • 手続きが簡単な分、誰でも開業できてしまうので社会的な信用は低い
開業・設立に必要な手続き

「開業届」→届け先:所轄の税務署
※個人事業税は都道府県税に該当するため、県税務署への届け出も必要
所得税の「青色申告承認申請書」→届け出:所轄の税務署
※節税につながる特典がある。確定申告を「白色申告」にする場合は不要

開業・設立手続き開業届を出す(0円)
事業の廃止廃業届を出す
社会的信用度 低い
会計・経理個人の確定申告
税金・経費 経費の範囲が狭い
赤字の繰越3年(青色申告の場合)
生命保険 所得控除
社会保険の会社負担分(従業員分含む) なし(5人未満の場合)

法人の場合

  • 法律のもと、新しく「法人(=会社)」をつくることになるので、「どこに拠点を置いて、何をするのか」など役所に届け出なくてはならない
  • 面倒な手続きが必要な分、少しハードルが高いが、社会的な信用も高い
  • 取引相手によっては、法人化しないと契約できないことがある
  • 税法上は、事業所得が500万円を超えたあたりで法人化のメリットがでてくる
開業・設立に必要な手続き

「法人設立登記」→申請先:設立会社の本店所在地を管轄する法務局
 ※登記には、社名・商店名等を入れた会社実印(代表者印)が必要
「法人設立届出書」(登記から2か月以内)
 →届出先:所轄の税務署 / 県税務署の法人事業税課 / 市町村の法人住民税担当部署

開業・設立手続き定款作成・登記が必要(6万円~25万円)
事業の廃止解散登記、公告等が必要(数万円)
社会的信用度高い(取引相手によっては「法人」が必須条件
会計・経理法人決算書・確定申告(税理士が必要な場合が多い)
税金・経費 経費の範囲が広い(経営者の給与等)
ただし、赤字でも法人税の均等割7万円※必要
赤字の繰越9年
生命保険全額経費
社会保険の会社負担分(従業員分含む) あり

「開業・設立」に関する疑問に税理士が答えます

開業届を出して確定申告をしなかったら、怒られますか?

開業しても納税するほどお金を稼げない人もいるので、開業届を出す=必ず確定申告をしないといけない、というわけではありません。ただ、納税義務があるほど稼いでいるのに確定申告をしないのは「脱税」です。

開業届を出し忘れていました!

基本は、事業の開始等の事実があった日から1か月以内ですが、いますぐ出しましょう。個人事業主の場合、税金の計算は「1月1日から12月31日まで」なので、仮に開業届の提出が4月だったとしても、さかのぼって2月3月の売上を集計して確定申告してください。

資本金っていくら必要なの?個人事業主でも資本金って必要なの

株式会社の場合、資本金1円から設立が可能です。建設業や労働者派遣事業などは最低資本金の基準が定められていますが、ほとんどの業種は資本金の下限額などの決まりはありません。個人事業主の場合は資本金は不要です。

開業届を出す前にホームページ作成を依頼しました。これも経費になりますか

経費になります。開業のために必要なお金であれば「開業費」として処理できます。

個人事業として始めて、あとから法人化することは可能ですか

はい、可能です。
ただし、法人化の判断をする場合は専門家に相談することをおすすめします。

資本金って使ってはいけない(ストックしていないといけない)お金なの?

使っても大丈夫です(資本金で商品を仕入れたり、人件費にしたり自由に使えます)ただし、事業に関することのみです。

個人事業から法人化するのはどのタイミング

以下のようなタイミングで法人化する例が多いようです。
①企業と取引するにあたり法人格が必要になったとき
②消費税の課税のタイミング:基本的に2年前の売上高が1,000万円超の場合、消費税を国に納める義務が生じます。仮に個人事業主として1,000万円超の売上があった場合も、そのタイミングで法人化すれば、法人として2年前の売上高は「0」の扱いとなり、消費税を国に納める義務はいったんなくなるため、このタイミングで法人化するケースもあります。※特例もあります。
③事業所得が約500万円超になったら:個人にかかる「所得税」などの額>法人にかかる「法人税」などの額となる場合も多いので、この程度の所得規模での法人化も多くみられます。

「開業・設立」に関する疑問に司法書士が答えます

株式会社や合同会社、NPO法人などいろいろな法人があるけど、どれを選べばいいのですか?

事業内容や設立の目的などによって、どの法人が最適化は異なります。信用力獲得のためなら株式会社、初期費用を抑えた法人化が目的なら合同会社、公共性のPRなら一般社団法人などを選択するケースがあります。

自宅を法人の“本店”として登記することはできますか?

可能ですが、賃貸の場合は賃貸借契約書に法人の登記の可否に関する記載がないか、大家さん(オーナー)に確認をとりましょう。

本店は一度登記したら変更できないできないのでしょうか?

本店移転登記にて変更可能です。登記申請書には、登録免除税として同一管轄内での移転の場合は3万円分の収入印紙を添付する必要があります(管轄が異なるときは6万円になります)

事業を始めるには会社をつくらないといけないのでしょうか?

事業を始めるとき、法人(会社)という形態で行る場合には、設立の登記が必要です。個人事業主として事業を始める場合には登記の手続きは不要です。

法人設立で気を付けることはどんなことですか?

「何をする会社なのか?」を記す「定款」に記載されていないことはできません。数年先の活動を見越した定款を作成しましょう。

法人化っていくらかかるの?

法人の種類により金額は異なりますが、株式会社の場合、役場関係に支払う手数料や税金で約25万円程度です。これに印鑑代や専門家に仕事を依頼する場合はその費用などがかかってきます。

法人を維持するのにお金がかかると聞いたことがあるのですが

法人は「人」なので、「住民税(法人住民税)」がかかります。赤字であったとしても毎年7万円程度が課せられます。(金額は各自治体や資本金、従業員数によって若干異なります)。個人事業主には法人住民税はかかりませんが、事業所得が290万円を超えると「個人事業税」が課せられます。

「許可申請」に関する疑問に行政書士が答えます

自宅で料理教室を開きたいのですが許可や資格が必要でしょうか?

自宅のキッチンで「料理の仕方」を教えるのに必要な許可や資格は特にありません。

車で食品の移動販売を行いたいのですが

保健所の許可申請が必要になります。また、改造した移動販売車を走行させるためには、道路運送車両法にもとづき、車の登録・検査に合格しなければなりません。道路で移動販売を行う場合は、管轄の警察署やその道路の管理者に使用許可を得る必要があります。

お弁当を近くのオフィス街で路上販売したいのですが

令和3年6月より、路上等で弁当を販売する場合には、食品衛生法により営業地の保健所に営業届を提出することが必要となりました。警察署での道路使用許可も必要です。また、食品衛生責任者の資格も必要です。食品衛生責任者の資格は、路上販売に限らず飲食物を扱う場合には必須の資格です。ただし、難しいものではなく、1日講習を受ければ取得できます。

自宅でつくったお菓子を販売してもいいですか?

自宅のキッチンでつくったものは販売してはいけません。菓子製造業の許可をとったキッチンでつくったものでないと販売できません。自宅であっても普段の食事をつくるキッチンとは別に専用キッチンがあるのなら大丈夫です(ただし、決められた設備が整っている必要があります)。食品衛生責任者の資格も必要です。

エステサロンやネイルサロンを開きたいのですが、許可や資格は必要ですか?

役所などでの許可も(法的に)必要な資格もとくにありません。ただし、提供するメニューによっては資格が必要となる場合もありますので、注意が必要です。

業種によっては「許可申請」なども必要です。

事業を始める前に要チェック!

事業の内容によっては、官公署などへの「許可申請」や「各種届出」が必要な場合もあります。新規事業を始めるにあたっては忘れないようにしてください。4.手続き①で紹介したのはほんの一例です。他にも届け出必要な場合がありますので、起業する前に自治体や行政書士などに確認するとよいでしょう。

英語教室などは許可申請などは不要ですが、食品をつくって販売する場合は、規模にかかわらず食品の種類に応じた保健所の営業許可が必要です。必ず、施設の所在地を所管する保健所に相談に行きましょう。

保健所関係

チェック
業 種区 分窓 口
飲食店・喫茶店許可保健所
食料品等の販売業 許可 保健所
菓子・総菜製造業 許可 保健所
旅館業 許可 保健所
理容院・美容院 許可 保健所

都道府県関係

チェック
業 種区 分窓 口
在宅介護サービス  指定都道府県・市町村
保健所 許可 都道府県・市町村
旅行代理店(国内旅行) 登録 都道府県

警察関係

チェック
業 種区 分窓 口
リサイクルショップ 許可 警察署
アンティークショップ 許可 警察署
道路使用の各種営業 許可 警察署
深夜酒類提供飲食店届出 警察署

あなたの事業に関係するものを確認できたら、STEP13の【法律の知識】へ進んでくださいね!

YUKI

Step13法律の知識