起業には、どんな費用がかかりますか?

自己資金は全体費用の3分の1以上に

事業を行うには、さまざまな費用がかかります。とはいえ、初めて起業する場合、どんな費用がかかるのか、まったく見当がつかないという人もいるでしょう。事業の規模や店舗の有無、起業方法などによっても必要な金額は大きく異なりますが、日本政策金融公庫の2020年調査によれば、開業費用は500万未満の割合が最も多く、全体の43.7%を占めています。

資金の調達先は「金融機関の借り入れ(平均822万円)」が最も多く、あとは貯金などの「自己資金 (平均266万円) 」でまかなうことが一般的です。

借入については後述しますが、必要な資金のうち、全額借入れでは金融機関の審査がまず通らないので、少なくとも3分の1以上は、自己資金で準備しましょう。

事業を始めるための費用と避けるための費用

初めに必要なのは、事業を始めるための費用(初期費用または開業資金といいます)です。名刺やチラシ、ホームページをつくったり、OA機器を用意すれば、その費用がかかります。店舗を借りれば、礼金・資金や数か月分の賃料に内装費用がかかることもあるでしょう。

また、個人事業主として起業する場合は、税務署に「開業届」を提出するだけで起業できますが、法人(会社)にする場合は、「登記」と言って、会社を立ち上げたことを登録する手続きも必要になります。

その際、「登記免許税」や「定款認証費用」などがかかります(設立する法人の形態によって費用は異なります)

このほか、事業を続けるための費用(ランニングコストあるいは運転資金といいます)として、月々の家賃や水道光熱費、商品や原材料の仕入れにかかる費用、広告宣伝費、店舗の修繕費、人を雇えば、人件費などもかかります。

私たちが「開業時」に要した費用

業種も業務内容もさまざまな先輩起業家が実際に開業時にかけた費用を紹介します。あなたが思い描く起業に近いものがあれば、目安にしてくださいね。

業種場所開業時の費用
(概算)
内訳
エステサロン賃貸物件(住宅街)400万円家賃 : 7万円
内装 : 150万円
開業時の備品 : 150万円
広告宣伝費 : 50万円
美容室賃貸物件(住宅街) 350万円家賃/光熱費: 15万円
内装 : 100万円
開業時の備品 : 100万円
広告宣伝費 : 20万円
人件費 : 21万円
仕入れ : 35万円
英会話教室自宅(住宅街) 200万円家賃 : なし 内装 :40万円 
ホームページ制作 : 50万円 
チラシ制作費:20万円
教材費 /事務用品費 : 60万円  
広告宣伝費 : 30万円 
洋菓子店賃貸物件(郊外) 300万円家賃 : 5万円 敷金 : 30万円
駐車場代 : 10万円 /年
開業時の機材費、備品 : 150万円
仕入れ : 25万円
勉強費用 : 50万円 
チラシ制作費:30万円
セラピスト賃貸物件(オフィス街) 300万円家賃 : 10万円 敷金 : 40万円 
開業時の備品 : 100万円
資格取得費 : 100万円 
チラシ制作費 : 20万円 雑費 : 30万円
料理教室賃貸物件(住宅街) 350万円家賃 :12万円 敷金 :48万円 
勉強費用 :50万円 設備 :50万円 
仕入れ : 50万円 
ホームページ制作 : 60万円  
広告宣伝費 :50万円 チラシ制作費:30万円
コスメ教室自宅 (住宅街) 100万円家賃 : なし 開業時の備品 : 30万円  
仕入れ : 40万円 広告宣伝費 : 30万円
ハーブティー店賃貸物件(住宅街)400万円家賃 : 20万円 敷金 : 80万円 仕入れ :50万円
備品 : 100万円ホームページ制作 : 50万円 
広告宣伝費 : 70万円  チラシ制作費:30万円

起業してから「思ったよりもお金がかかってしまった…」という話はよく聞きます。初期費用だけでなく、開業後の毎月かかる費用(ランニングコスト)を見落とさないようにしなくちゃいけませんね。

また、開業届を出す前に払ったお金も開業費などとして処理できます。たとえば、ホームページや名刺をつくった費用は開業費に相当します。ただし、10万円以上のパソコンなどは固定資産になるなど、会計処理にはちょっと注意が必要です。青色申告をする個人事業主なら、30万円未満であれば、少額減価償却資産の特例で一括で経費計上が可能です。

税金が安くなる仕組み「所得控除」を知っていますか?

「所得」にもいろいろな種類がある

一年間に入ってくるお金のことを「年間収入(年収)」と言いますが、個人事業主にとって「所得」とは、この収入から必要経費を差し引いた金額です。この所得にもいろいろな種類がありますが、ここでは「事業所得」「課税所得」「給与所得」の3つについて押さえておきましょう。

ここでいう「売上」は収入です。収入には売上に加え、補助金などの物品の販売以外などで入ってきたお金も含みます。話を分かりやすくするためにここでは売上と表記しています。

事業所得=売上高ー必要経費

夫が配偶者控除を受けられるかどうかなどの基準になります。

課税所得=売上高-必要経費-いろいろな所得控除

夫が配偶者控除を受けられるかどうかなどの基準になります。

給与所得=どこかに勤めて得られるお金

会社の場合、個人事業主のように収入から必要経費を差し引けない代わりに、一定の金額を給与から差し引く仕組みがあり、これを「給与所得控除」と言います。

所得を減らし、税金を安くできる「所得控除」

収入から必要経費を差し引いたものが「事業所得」です。この「事業所得」がいくらになるかによって、「夫などが配偶者控除を受けられるか」といったことが決まります。一方、「税金をいくら納めないといけないのか」は「課税所得」によって決まります。

事業所得から所得控除を引いたものが、「課税所得」で、これを元に所得税を計算することになります。所得控除にはいろいろな種類があり、それぞれの控除ごとに適用できる要件が異なります。自分が使える所得控除があるかどうか、一度調べてみましょう。

所得控除

医療費控除、社会保障控除、小規模企業共済掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄付金控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除(=男性と女性では要件が異なります)勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、雑損控除、基礎控除

所得税の計算式

個人事業主の場合

収入-必要経費-所得控除=課税所得

課税所得×税率-課税控除額=所得税額(納付額)

※課税所得に応じた税率や控除額は、国税庁サイトの「所得税の速算表」を検索してください。

小規模企業共済に加入すると将来にそなえての積み立てとなるとともに、掛金が全額所得控除対象となるので、節税効果にもなります。このように所得控除については、少々ややこしく感じるかもしれませんが、「経費にはできないけれど控除できる項目があるということ」を覚えておくとよいですよ。

女性の方々をコンサルをしていると、「主人の扶養内で起業したいのですが・・・」というご質問もよくいただきます。そこで、扶養範囲内の起業についても次章にまとめましたので、STEP7の【扶養範囲内の起業】へ進んでくださいね!

YUKI

Step7扶養範囲内の起業